「信託投資やETF(+インデックス・ファンド)は長期投資すれば必ず儲かり、損はない」説は本当か?
こんにちは!
アメリカ在住で株投資歴13年の元日本人・アメリカ人のYascoです。
皆さんは、上記のような株専門家アドバイスをお聞きになったことはありませんか?
私はよくあります。
でも、現在は私のポートフォリオの90%以上は米国企業の個別株で、信託投資やETFはありません。
この理由は私の2番目の投稿でお話ししましたが、今回はそのお話をもう少し詳しく私なりに持論を展開していきたいと思います。宜しければお付き合いください。
まず、個別株取引と信託投資やETF(インデックスファンド含む)とで大きな違いがあります。それは個人投資家が支払うExpense Ratioと呼ばれる管理手数料です。
個別株取引は個人投資家が自分でどの企業株を取引するか決めて売り買いするので、手数料が一切かかりません(最近はほとんどの在米ブローカーがブローカー料をゼロにしました)。
一方、信託投資やETF(インデックス)は個人投資家がどの個別株を取引するかを自分で決めることができない。なぜなら、金融機関のファンド・マネジャーにその決定権があるからです。だから、個人投資家が信託投資やETFを取引する場合、このファンド・マネジャーにお世話してもらわないといけないため、その管理手数料を払う必要があります。
この管理手数料が曲者だと私個人的には思っています。
それに加えて、信託投資は更なる注意が必要です。なぜなら、ファンドによって、異なるルールがあり、最低投資開始金額の設定があったり、大抵の信託ファンドには管理手数料以外にも販売手数料(英語では”Load”とか”Sales Fee”と呼ばれる)がかかるからです。この販売手数料は最近は無くなりつつあるので、よく調べてスマートな選択をすれば防げる手数料ですが、平均で5%~最高8.5%までかかります。
ここ20年間で、信託投資とETFの競合が激しくなり、信託投資、ETF、インデックス・ファンド(信託投資の一種)にかかる管理手数料は確実に安くなっているようですが(20年前に比べて約50%の削減)、ゼロになることはありえないでしょう。だって、そんなことしたらゴールドマンサックスや、モーガンスタンレー、JPモーガン等々無数にある投資銀行が軒並み倒産してしまいますからね。
ある機関が行った2019年時点での調査によると、平均管理手数料は、
ETF:0.45% (安ければ0.2%~)
信託投資(ファンド):0.66% (最高1.25~1.5%、それ以上であれば高すぎ)
だそうです。
以上の数値にETFの場合はブローカ手数料が上乗せされる場合もあるのでご注意を(取引の度にかかる料金で最高でも$10くらいか?取引ブローカーによって様々)!
さらに、上述の通り、信託投資ファンドの場合、ある一定年数以内にそのファンドを解約してしまうと、販売手数料(5%~8.5%)がかかることが多いので要注意です。
皆さんお気づきのように、なぜETFより信託投資の方が管理手数料が高いのか?というと、信託投資の方がファンド・マネジャーおよび取り扱い金融機関にとって手間がかかるからです。ETFはインデックスそのものを売り買いするだけで、個別株を売ったり買ったりする必要がないので、やらなきゃいけない作業が少ないけど、信託投資はファンドに含まれる個別株を常にウォッチして適時に売ったり買ったりしなきゃいけないので、手間がかかるわけです。おまけに、各ファンドの宣伝とかプロモーションもしないといけないし、ファンド・マネージャーの高額報酬も払わないといけないので、とにかく管理運営が大変なんですね。
ただし、信託投資ファンドによって管理手数料にはかなりバラつきがあります。たとえば、高額企業株を集めたファンド(ラージ・キャップ)より低額企業株を集めたファンド(スモール・キャップ)の方が手数料が高いし、国内企業株ファンドより、海外(米国外)企業株ファンドの方が手数料が高いのが通常です。これには費用対効果(リターン)が関係しているように思います。
以上を聞いて、
「手数料取られると言っても年間1%くらいなら大した損額にならないんじゃね?😎」
なんて思う方も多いかもしれませんが、「ちりも積もれば山となる」ですよ。
「信託投資やETFは10年~20年くらいの長期投資していればリスクヘッジもできて儲かる確率が高いので安心だろう」という意見は間違いではありませんが、それには大きな落とし穴がある☝のでよくご自分で考えることをオススメします。
10~20年間で管理手数料がどれくらいの差を発生させるのかを分かりやすくした表が以下です。ご覧ください。
上記の表では、投資元金を1万ドル(約100万円)で年間10%のリターンが得られたという想定ベースです。ただし、この10%のリターンが毎年10~20年間にわたって得られることはそうそうあることではないので、ラッキーケースと思っておいた方が良いと思います。アメリカでは毎年平均8%のリターンが得られれば良い投資をしていると言われています。
表中の管理手数料(Expense Ratio)は0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%の各ケースで算出されています。現実的に1.0%を想定していればいいんではないでしょうか。
そうすると、10年後、自分で個別株を取引きした場合は口座残高が$25,937になりますが、1.0%の管理手数料がかかる投資信託に投資した場合は残高が$23,676にしかなりません。差額は$2,261ですね。さらに年数がたって20年後を見ると、その差額が$11,175(16.6%)にまで膨れ上がります。あくまでこれは元の軍資金が日本円で100万円の場合ですから、1000万円の投資の場合ざっくりとその10倍になります。
これって、すごい差額=損額😱ではないでしょうか?
少なくとも、私はこれを見て「えらい損になるな~」と思うタイプです。この差額を元からスマートに個人株の投資に充てていたら10年後、20年後いくらに膨れ上がるんだろう?と思ってしまいます。
さらに、上述の通り、投資信託ファンドを5~10年以内に解約してしまうと販売手数料を取られる場合がまだまだ多くありますので(ファンドによる)、損額はさらにその分上乗せになります。
道理でウォールストリートの金融企業がめっちゃ潤っているわけですな~。
ここで余談ですが、ETFとインデックス・ファンドって違いは何かご存じですか?
私は一緒だろうと最近まで思っていましたが、少し違いがあるようです。でも大した違いではなさそうです。
ETFは普通の個別株のようにNYSEの営業時間内にいつでも売り買いできますが、インデックス・ファンドは投資信託と同じ扱いになりますので、毎日の終値でのみ取引可能です。つまり毎日4:00以降に取引が成立します。
管理手数料ですが、ETFはインデックス・ファンドより安いはずです。でもインデックス・ファンドの手数料は投資信託より安いのが普通だと思います。
以上が、「なぜ私は信託投資やETF(+インデックス・ファンド)の取引をほとんどしたくないか」の理由説明になります。
もちろん、これは個人の金銭感覚やリスク耐性に依りけりなので、一概には言えませんが、少なくとも、「投資信託やETFの長期投資は簡単に儲かるしリスクが低いので安心」と慢心してしまうのは危険だということです。
というのも、ファンド・マネジャーの良し悪しは本当に差が大きくて、ファンドによっては毎年儲けがでていない“クソ😰みたいなファンド”も良くありますし、ETFでもブローカーによって手数料に差がありますし、長期リスクが低いのと引き換えに成長株などに比べてリターン率が低いので、費用対効果を考えれば「長期投資で簡単にガッポリ儲けられる」とは言えないと思います。また、投資金をいつ現金化する必要があるかじっくり考えて、買い時売り時を間違えないようにしないとほとんど儲けが出なくなることも往々にして発生します。
ここで、私が考える一番の得策は、
「リターン率が高い優秀な信託投資ファンドを調べて、各ファンドに含まれる個別株(英語でHoldings)を自分で売り買いすればいいんではないか」
ということです。
もちろん、そんなに単純にはうまくいかないのが個別株取引の難しいところですが、その話はまた今度にします。